Human Life CORD JAPAN

企業理念へその緒が紡ぐ未来 
対談 04

サプライチェーンを構築し、日本中へこの想いを届けるために。

アルフレッサ株式会社 代表取締役社長 福神 雄介氏

スペシャリティ製品や再生医療等製品など、医療の進化へ対応すべく「高度なロジスティクス」を確立するアルフレッサ株式会社。代表取締役社長の福神雄介氏に、細胞医療のサプライチェーン構築に取り組む意義やこれからの細胞医療に対する期待など、代表の原田がお話を伺いました。

原田:当社が2017年に創業後、当時、エス・エム・ディ株式会社(アルフレッサグループの中で、スペシャリティ製品の効率的で安定的かつ高精度な供給をマネジメントする事業会社)の代表取締役社長であった福神社長にお会いし、その時から当社の事業に興味を持っていただきました。私たちにご期待いただいた部分や、なぜあの時ヒューマンライフコードへの支援を決意してくださったのか、そのあたりをまずお聞かせいただけますか?福神:当社の主たる業務は卸業ですので、コマーシャル製品が主軸です。しかしながら、再生医療にはその前から取り組んでおり、学会や企業の方と話す機会をとおして、再生医療は海外からの輸入に依存しており国内においてのサプライチェーンが全く存在していない、研究してもその後の開発フェーズへのシナリオがない、と常々感じていました。その一方で、iPS細胞でノーベル賞を取られた山中先生を輩出したり、ES細胞で世界をリードしていたりと実績もあり、アカデミアがこれだけがんばっているのに産業に行きつかない。そこに、課題意識を強く持っていました。最大のボトルネックは、国内で原材料がないこと。御社がもし最初に個別の製品だけの話をされていたら、こういう関係性にはなっていなかったでしょう。原田社長は私と同じ問題意識を持っており、国内で安定的に高品質で且つリーズナブルな価格で細胞供給し、多くの間葉系細胞(MSC)が様々な臨床に使える環境を整備していくことと、個別の製品の適応症を拡大していくという二本柱の両輪を回す。それは正に我が国が抱えているサプライチェーンの課題を解決しながら、かつ一企業として成長を遂げていく唯一の方法である。これは間違いないと思いました。ただ一方で、それは現状の課題を明らかにすることであって、1スタートアップ企業としては、大変さをアピールして終わる可能性もあります。分かっている人からすれば、そこにものすごく大きな課題があって、ブレークスルーを起こすことができれば革命的に世の中を変えることができると分かっていますが、分かっていない人が聞くと、難しいことをやろうとしていて、成功率が低いからよろしく、とも聞こえる。そういう意味では率直に話していただいて、かつ私が持っていた課題認識とぴったりミートしたので、これは間違いないとすぐに思うに至りました。

原田:会社を立ち上げた時のペインは、今の座組では続かない、産業という真の社会実装を考えた場合、誰かを救うために誰かを傷つけるというのは医療としては存在しても、産業の観点からすれば、持続的に続けられず、そしてそれを発展的に広げられず、事業としての成長戦略が描けないことでした。そういった観点から、輸入に依存せずに国内で備蓄できる原材料の確保は、循環型のエコシステムにつながるイメージが明確に持てたので、これは今やらなければ、という想いで突き進むことを決断しました。そうはいっても、お会いした時はまだ何も確証を示せない状況でした。起業経験もコネクションもない、お金もこれから、モノもこれから、ないないづくしでしたが、そんな中で何を決め手に当社事業に賭けてみようと思われましたか?もう少し詳しく聞かせてください。福神:サプライチェーンの構築は、プラットフォーム事業とプレイヤーの両機能で成り立ちます。卸は古典的プラットフォームだと思っています。物流や商流、医薬品であればデータ公開などを機能として構築し、製薬会社や医療機関がそういった機能構築に投資しなくていいようにするのが卸売業の意義です。我々はプラットフォームにお金をかけるのであって、個別の製品に投資するのは本来の目的ではありません。ただ、我々も多少はプレイヤーの方と一緒に新しい機能構築をしていかないと、まったく時代のニーズに合わないものになってしまいます。これまでもいくつか投資させていただきながら、自家細胞や他家細胞、遺伝子療法など、なるべく広い視野を持ってこの新しい細胞医療のプラットフォームを構築してきました。この東京大学医科学研究所発の臍帯由来MSCを世に出すサプライチェーンを作る。これは投資として万一失敗してしまったとしても当社の日本国における意義としてやらなければいけない、ある意味、損得ぬきだったと思います。
全国に間違いなくお薬を届けられる巨大プラットフォームを維持できるプレイヤーは我が国には少ない。我々がやろうとしている細胞治療の流通プラットフォームの入り口が細胞原材料であって、しかもそれが東京大学医科学研究所発のものである。それによってサプライチェーン構築に対する確度がぐっとあがる。もちろん大成功を信じているものの、例え失敗してでもやらなければいけないと思ったんです。

原田:サプライチェーンの座組を作ったものがこの領域では勝ちといわれる中で、双方の先見の明が一致したということでしょうか。今回、内閣府主催のオープンイノベーション大賞にて厚生労働大臣賞を共同受賞したことは我々にとって大きな追い風となっています。改めて、御社が当社と連携する意義をお聞かせいただけますか?福神:細胞治療分野は、まさに卸のおもしろみが発揮できる分野であると思っています。間葉系細胞(MSC)はさまざまないい効果を体に与える。同じ価値を従来の化合物でも与えることはできますが、細胞は従来の化合物やバイオでは治せなかったことを治す、これは誰が見てもわかりやすいですが、シンプルな炎症や鎮痛においても、従来の化合物より細胞の方がよりよかったり、より身体の負担が少なかったり、患者さんのQOLを高めたりもします。しかし、費用対効果を考えると、安くなった化合物やバイオより、少なくとも同等相当でコストダウンしなければならない。細胞治療分野は新しい発見をして治らなかった領域をなおすこともありますが、実はサプライチェーンをどんどん強化して効率化を進め、よりリーゾナブルな価格で提供することで裾野が広がっていきます。コストラインが下がれば下がるほど活躍の場が広がっていくモデルだと思っています。細胞治療に関しては、サプライチェーンと開発が車の両輪になれる。そういう意味では卸こそ、この細胞治療に主体的に取り組まなくてはならないという意識をもっています。
卸は、まさに共通性の高いオペレーションを作りこんで、より多くの製品やサービスに乗せて、それによって一輸送あたりのコストを下げることが社会的意義です。より多くの製品を獲得してより多くの患者さんに提供する。再生医療は流通業として製造業を直接的に応援できるという部分においても大きな価値を感じています。今までは、日本でうまくいったら、ものを輸出するかライセンスを供与するかでしたが、細胞医療の場合は、単にライセンスアウトしただけでは、アジア各国において現地で同じことを再現できるかというとおそらく難しいと思うんですね。そうすると、このサプライチェーンモデルごとパッケージングで輸出するというかたちが今後できるわけで、グローバル化という観点からも、これまでにない事業モデルになるのではないか。そんな期待も持っています。
原田:製造とサプライチェーンを車の両輪のごとく構築していき、価格帯に対しても採算性のとれる事業、それが持続発展していけるようなかたちで展開していきたいですね。そうして日本で構築したモデルが、きっと世界にも展開できる。福神:他家細胞の場合、高品質な細胞が手に入らないとサプライチェーンがスタートしない。多くの国では、さまざまな感染症などでドナーになれない場合があります。そういう意味では我が国は圧倒的に感染症の比率が少ないため、きれいな細胞の供給元としてはとてもいいフィールドになります。日本は資源の少ない国という考えが頭に染みついていますが、細胞は日本が資源大国になれる数少ない産業領域だと思っています。アジア圏にパッケージごと展開しても相当な比率で感染症の可能性があります。先ほどパッケージ輸出ができるとお話しましたが、我が国が細胞という新しい輸出商品を獲得することができるのではないかとの期待も持っています。原田:環境の暴露因子のリスクは非常に大きい。年を取ればとるほどそのリスクは高まってきます。そのリスクが最小化されているのが、生まれた時の組織である臍帯です。そういった観点からも、臍帯を資源化する価値はあるだろうと考えています。臍帯というのは、それはお母さんと赤ちゃんの最も強いつながりの部分であり、絆です。ご両親に感謝することを思い起こす上ではとても大事なものです。しかし、産業上における臍帯の持つ資源としての価値はこれからです。捨てるのではなく備蓄する。それを困っている患者さんにつないでいくというところになりうる重要な資源ですので、サプライチェーンの強靭化に向けて共に成し遂げていきたいと思います。再生・細胞医療領域の産業を今後普及させようとする同志として、引き続きの密な連携をよろしくお願いいたします。

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