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コラム

再生医療の市場規模|2030年以降の成長予測と細胞治療・UC-MSCsの可能性

再生医療は、細胞や遺伝子、組織工学などを活用し、病気やけがで損なわれた機能の回復を目指す医療領域として注目されています。市場調査会社や業界団体の資料でも、再生医療市場は2030年以降にかけて大きく拡大する成長産業と見込まれています。

一方で、再生医療は細胞治療や遺伝子治療、組織工学など幅広い技術領域を含むため、市場規模はどこまでを対象とするかによって異なります。そのため、再生医療市場を理解するには、市場規模だけでなく、成長を支える技術や要因もあわせて見ることが大切です。

本記事では、再生医療市場の規模や2030年以降の成長予測を整理するとともに、市場成長を支える要因や、臍帯由来間葉系間質細胞(UC-MSCs)が注目される理由について解説します。

再生医療の市場規模はどれくらいか

世界の再生医療市場は今後も高い成長率が見込まれており、日本市場も研究開発力や製造基盤、アジア市場との近さを背景に、2030年以降の成長産業として期待されています。

再生医療の市場規模を見る際は、世界市場と日本市場を分けて整理することがポイントです。

世界市場では高い成長率と拡大が見込まれている

出典:再生医療市場規模、シェア |成長レポート 2034

複数の市場調査会社は、再生医療市場が今後も高い成長率で拡大すると予測しています。ある市場調査では、世界の再生医療市場は2025年の482億米ドルから、2034年には約3,608億米ドルまで拡大すると予測されており、年平均成長率(CAGR)は25.56%とされています。

市場規模の予測には、細胞治療や遺伝子治療・組織工学に加え、生体材料や周辺産業まで含めるかどうかなど、調査会社ごとに対象範囲や予測期間の違いがあります。そのため、個々の数値だけで比較するのではなく、いずれの調査でも再生医療市場が高成長分野として位置付けられている点に注目することが重要です。

日本でも2030年以降に向けた成長産業として期待されている

出典:掲載産業省 METI Journal ONLINE

日本でも、再生医療は2030年以降に向けた成長産業として期待されています。再生医療関連企業などが参画する業界団体「再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)」の提出資料では、「再生医療は10兆円を超える成長産業」と位置付けられています。2020年時点の約7,000億円から、2030年には6.9兆円、2040年には12兆円規模へ成長するとの試算が示されています。

この試算は、開発中の製品を含めたパイプラインベースで算出されているため、実際の上市状況や承認状況、製造体制、価格制度などによって変動する可能性があります。

一方で、再生医療が「治療」だけでなく、CDMO(医薬品の製造や開発プロセスを受託する企業)や培地、製造装置、物流などの周辺産業を含めた成長産業であることを示す材料といえます。

参考:再生医療産業によるバイオ産業の発展について

再生医療市場を構成する主な技術領域

再生医療市場を理解するには、市場規模だけでなく、どの技術領域が成長をけん引しているのかを見ることも重要です。

再生医療は、損傷した組織や臓器の修復・再生を目指す医療の総称であり、細胞治療や遺伝子治療、組織工学など幅広い技術領域が含まれます。それぞれ対象疾患や患者数、治療単価、承認状況、製造の難易度が異なります。

そのため、再生医療市場を理解する際は、「対象技術」「疾患領域」「承認状況」「製造可能性」の4つの観点から整理すると、それぞれの特徴や違いを理解しやすくなります。

細胞治療|現在の再生医療市場をけん引する中心領域

細胞治療は、再生医療市場を代表する技術領域の一つです。市場調査では主要な区分として扱われることが多く、承認製品の実用化や臨床開発、企業による投資が進んでいることから、現在の再生医療市場をけん引する中心的な領域と考えられています。

対象技術 患者自身の細胞を用いる自家細胞治療と、ドナー由来の細胞を用いる同種細胞治療(他家細胞治療)があります。
疾患領域 CAR-T細胞療法のようながん領域に加え、間葉系間質細胞(以下、MSCs)を用いた免疫調整や炎症抑制、

組織修復など、幅広い疾患を対象とした研究開発が進められています。

承認状況 一部の細胞治療製品はすでに実用化されており、研究段階から医療現場で使われる段階に進みつつあります。
製造可能性 細胞の品質を一定に保つ品質管理や、培養・加工・保管・輸送までを含めた製造体制の構築が重要な課題です。

参考:細胞治療の市場規模、シェア、動向

遺伝子治療|高単価・高付加価値領域として市場を大きくけん引

遺伝子治療は、対象患者数が限られるケースもある一方、治療単価が高くなりやすく、市場規模の金額面を押し上げる高付加価値領域として見られています。

対象技術 遺伝子を補う、修復する、細胞に新たな機能を持たせるなどのアプローチがあり、さまざまな疾患を対象とした研究・開発が進められています。
疾患領域 希少疾患やがん領域を中心に開発・実用化が進められています。
承認状況 海外を中心に実用化された遺伝子治療製品が登場しており、高付加価値な治療領域として市場規模の拡大が期待されています。
製造可能性 ベクター製造や品質管理、安全性評価、コスト管理などが大きな課題となっています。

そのため、遺伝子治療は高単価で市場をけん引する可能性がある一方、製造・コスト・安全性の面で課題も多い領域と整理できます。

参考:遺伝子治療市場規模、シェア |成長レポート [2026-2034]

組織工学領域|幅広い応用が期待される領域

組織工学領域は、対象となる患者層や応用範囲が広く、再生医療市場の裾野を広げる領域として期待されています。

対象技術 細胞、足場材料、生体材料、成長因子などを組み合わせ、損傷した組織の修復や再建を目指す技術です。
疾患領域 創傷治療や皮膚、骨、軟骨、角膜、整形外科領域など、幅広い分野で応用が期待されています。

特に、慢性創傷や整形外科領域では、高齢化に伴う患者数の増加が見込まれることから、再生医療の応用分野を広げる領域として期待されています。

承認状況 細胞シートや皮膚・軟骨など、比較的実用化に近い領域もあり、臨床応用との距離が近い分野といえます。
製造可能性 製品の標準化や保存・輸送体制の整備に加え、医療現場で扱いやすい仕組みづくりが普及の鍵になると考えられています。

参考:組織工学市場の規模、シェア、成長

 

再生医療市場が成長している主な理由

再生医療市場の成長は、医療ニーズの高まりだけでなく、研究開発の進展や制度整備など、複数の要因によって支えられています。

高齢化や慢性疾患の増加に加え、細胞治療や遺伝子治療などの実用化に向けた研究開発、規制・承認制度の整備がその成長を後押ししています。

高齢化や慢性疾患の増加により再生医療へのニーズが高まっている

既存治療では十分な効果が得られにくい疾患に対し、再生医療は新たな治療の選択肢として期待されています。

高齢化の進行や生活習慣の変化を背景に、筋力・筋肉量の低下により生活に支障をきたすサルコペニアや慢性的な糖尿病合併症など、長期的な治療や管理が必要な疾患を抱える患者さんは増加しています。

失われた組織や機能の回復を目指す再生医療の考え方は、従来の医療の限界を補うアプローチとして注目されています。

細胞治療・遺伝子治療などの実用化に向けた研究・開発が進んでいる

近年は、細胞治療や遺伝子治療、組織工学製品など、実用化された再生医療等製品が増えています。

日本では、人工多能性幹細胞(以下、iPS細胞)を活用した重症心不全やパーキンソン病を対象とする日本発の再生医療等製品が、条件及び期限付承認制度のもとで承認されるなど、研究段階から実用化の段階へ移りつつあります。

また、市場拡大の背景には、承認品目の増加に加え、臨床試験の進展や企業間提携、買収、ライセンス契約など、研究・開発や事業化を後押しする取り組みが進んでいることも挙げられます。

規制・承認制度が整備され研究開発を後押ししている

日本では、再生医療等製品について、医薬品や医療機器とは異なる区分として、製品の特性を踏まえた承認・規制の枠組みが整備されています。このような制度整備により、再生医療等製品の研究開発や実用化が進められています。

その一つが「条件及び期限付承認制度」です。これは、有効性が推定され、安全性が確認された再生医療等製品について、製造販売後に有効性・安全性に関するデータを収集することなどを条件に、早期の実用化を可能にする制度です。新たな治療を必要とする患者さんへ、再生医療等製品を早期に届けることを目的としています。

一方で、すべての再生医療等製品がこの制度を活用するわけではなく、通常承認を目指して開発が進められる製品もあります。例えばヒューマンライフコードでは、造血幹細胞移植後の非感染性肺合併症(以下、NIPSc)を対象とした臍帯由来間葉系間質細胞(以下、UC-MSCs)「HLC-001」について、第Ⅲ相臨床試験を進め、通常承認の取得を目指し、研究・開発に取り組んでいます。

出典:新再生医療等製品の承認品目一覧

 

細胞治療市場で注目されるUC-MSCsの可能性

細胞治療市場の拡大に伴い、UC-MSCsへの関心も高まっています。UC-MSCsは、臍帯由来という特性を生かした細胞治療として注目されており、国内外で実用化に向けた研究開発が進められています。

安定供給可能な細胞として期待されている

UC-MSCsが再生医療市場で注目される理由の一つは、ドナー由来の他家細胞として治療に活用できる点です。UC-MSCsは出産時に得られる臍帯を細胞ソースとして利用するため、ドナーへの追加的な侵襲を伴うことなく、計画的かつ安定した細胞供給が可能です。

また、ドナーが出産直後の赤ちゃんであるUC-MSCsは細胞の増殖性にすぐれ、1本の臍帯から数千人分の治療薬を製造できる可能性があり、大量製造による安定供給可能な細胞として期待されています。さらに、大量に製造した細胞を保存・備蓄することにより、必要なときに迅速に細胞治療を提供することが可能となります。

このように、UC-MSCsはドナーへの追加的な侵襲を伴わず、計画的かつ安定して大量製造することができる安定供給可能な細胞として、再生医療の産業化に貢献することが期待されています。

UC-MSCs研究開発の進展

UC-MSCsを活用した細胞治療では、さまざまな疾患を対象とした研究開発が進められています。

ヒューマンライフコードでは、NIPCsを対象としたUC-MSCsの研究開発を進めており、現在、第Ⅲ相臨床試験の段階にあります。第Ⅲ相臨床試験は、有効性と安全性を最終的に検証する重要な段階であり、UC-MSCsを用いた細胞治療の実用化に向けた取り組みが着実に進んでいることを示す事例の一つです。

また、NIPCsに加え、サルコペニアをはじめとするさまざまな疾患領域への応用も検討されています。対象疾患ごとに開発段階は異なるものの、幅広い疾患に対する効果が期待できる細胞として、UC-MSCsへの関心は高まり続けています。

参考:ヒューマンライフコードとロート製薬、第Ⅲ相臨床試験に向けた治験製品製造で連携

UC-MSCsのグローバル展開

ヒューマンライフコードは、アラブ首長国連邦アブダビ保健局とグローバルヘルスケアリーダーM42による国家戦略プロジェクトであるアブダビ・バイオバンクとの間で、UAEおよび中東・北アフリカ(MENA)地域におけるUC-MSCsの製造・開発および臨床応用の現地展開に向け、戦略的パートナーシップを結び、現地での開発および事業を推進するための現地法人としてHuman Life CORD MENAを設立します。

これらの取り組みは、ヒューマンライフコードが日本で構築してきたUC-MSCsの研究開発から製造、輸送・保存、臨床現場での実用化までをカバーする細胞治療のエコシステムをMENA地域へ展開し、UAEをUC-MSCsの国際的な拠点として、グローバル展開を進めることを目的としています。細胞治療は世界各国で実用化のための研究開発が進んでおり、グローバルレベルで市場が拡大しています。ヒューマンライフコードによるUAEでの取り組みを通じて、UC-MSCsを活用した細胞治療のグローバルな実用化が期待されます。

 参考: ヒューマンライフコード、Abu Dhabi Biobankと戦略的パートナーシップを合意 | ヒューマンライフコード株式会社 | Human Life CORD inc.

まとめ

生医療市場は、世界的に高い成長が見込まれる分野であり、2030年以降も大きな市場拡大が予測されています。市場をけん引する主な技術には、細胞治療や遺伝子治療、組織工学などがあり、特に細胞治療は主要な成長領域の一つと考えられています。

その中でもUC-MSCsは、他家細胞による治療に活用でき、計画的かつ安定して大量製造することができる安定供給可能な細胞として、細胞治療の普及を推進する細胞として注目されています。

ヒューマンライフコードは、UC-MSCsを用いた細胞治療の実用化を目指し、NIPCsを対象とした第Ⅲ相臨床試験を進めるとともに、海外展開にも取り組んでいます。このような取り組みは、UC-MSCsを活用した細胞治療が実用化に向けて着実に前進していることを示すものです。

UC-MSCsやヒューマンライフコードの研究開発について詳しく知りたい方は、ヒューマンライフコード株式会社の事業内容ページをご覧ください。

参考:事業内容 | ヒューマンライフコード

 

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