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コラム

サルコペニア治療の現在地|運動・栄養療法から臍帯由来細胞を用いた再生医療研究まで

加齢に伴う筋肉量や筋力の低下は、転倒や骨折、要介護状態につながりうる重要な健康課題です。このような状態は「サルコペニア」と呼ばれ、高齢化が進む中、個人だけでなく社会全体の課題となっています。

 

サルコペニアは単なる加齢現象ではなく、早期の予防や適切な対応が求められる疾患として注目されています。2016年には米国の公的機関によって国際疾病分類に登録され、治療が必要な病気として位置づけられました。しかし、現在の治療法だけでは回復が難しい患者さんもおり、予防や早期介入に加え、新たな治療アプローチの研究が国内外で進められています。本記事ではサルコペニアの基本的な考え方や現在の治療法、治療開発の現状について解説するとともに、臍帯由来間葉系間質細胞(UC-MSCs)を用いたヒューマンライフコード研究について紹介します。

 

現在のサルコペニア治療の基本は運動療法と栄養療法

現時点でサルコペニアに対する基本的な治療は、運動療法と栄養療法です。筋力や身体機能の維持・改善を目的として、個人の体力や基礎疾患に応じた方法で取り組むことが推奨されています。

 

運動療法では、筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動をはじめ、歩行やバランス訓練などが行われます。サルコペニアの診療ガイドラインでは、運動介入によって四肢骨格筋量や膝伸展筋力、歩行速度などの改善につながる可能性が示されました。

 

参考:サルコペニア 診療ガイドライン

 

栄養療法では十分なエネルギー摂取に加え、筋肉の材料となるたんぱく質や必須アミノ酸を適切に摂取することが重要とされています。特に運動療法と組み合わせることで、よりよい効果が期待されています。

 

参考:サルコペニアおよびフレイルの栄養管理ガイドライン2025

 

サルコペニア治療で新たな治療法が求められている理由

サルコペニアは加齢だけでなく、低栄養、活動量の低下、慢性疾患、炎症など複数の要因が関与する疾患です。すべての患者さんに同じ運動療法や栄養療法だけでは十分な改善が難しい場合もあります。そのため近年では、新たな治療法の開発の期待も高まっています。

 

例えば、筋力の低下が著しい患者さんでは運動を継続することが難しい場合があります。また、慢性疾患や低栄養などを併発している場合には十分な栄養管理が困難となるケースも少なくありません。

 

さらに、高齢化の進行に伴いサルコペニア患者の増加が見込まれる中、健康寿命の延伸や要介護状態の予防は社会全体の課題となっています。

こうした背景から、現在は、再生医療や細胞治療をはじめとする新たな治療法の研究が国内外で進められています。ここでは、サルコペニア治療の現状と新たな治療法の鍵について説明します。 

 

サルコペニアには現状承認された治療薬がない

現在、世界でサルコペニアそのものを対象として承認されている治療薬はありません。

 

薬剤による治療については選択的アンドロゲン受容体作動薬(SARM)を含め、さまざまな研究が進められており、骨格筋量の増加など一定の有効性が報告された例もあります。

 

しかし、患者さんにとって重要な筋力や歩行速度、日常生活機能の改善については、十分な有効性を示すエビデンスは現時点では限定的であり、さらなる検証が必要です。

 

このように、現時点では、サルコペニアそのものを対象とした薬物療法は現在も研究段階にあり、臨床で広く用いられる治療薬は確立されていません。

 

バイオマーカーの確立が新たな治療法の鍵となっている

サルコペニアに対する研究が国内外で進む中、再生医療や細胞治療など新たな治療法の開発も進められています。一方で、これらの治療法を実用化するためには、病態をより深く理解するとともに、早期診断や治療効果を客観的に評価できる指標(バイオマーカー)の確立が重要です。

 

現在のサルコペニア診断では、AWGS 2025の基準に基づき、筋力や筋肉量、身体機能などを総合的に評価します。しかし、病態の進行を客観的に把握し、早期治療や治療効果の評価に活用できるバイオマーカーは、いまだに確立されていません。

 

参考:新しいサルコペニアの診断基準(AWGS 2025)のお知らせ

 

ヒューマンライフコードでは、名古屋大学との共同研究を通じて、UC-MSCsがサルコペニアに関連する筋肉の変化へ与える影響について基礎的な知見を蓄積し、その成果に基づきUC-MSCsのサルコペニア治療用途に関する特許を取得しております。

 

参考:臍帯由来間葉系間質細胞のサルコペニア治療用途に関する特許取得のお知らせ | ヒューマンライフコード株式会社 | Human Life CORD inc.

 

この成果を将来的な臨床応用につなげるため、ブラジルのリオ・グランデ・ド・スール連邦大学と共同で、サルコペニアの病態理解と関連バイオマーカーの探索を目的とした臨床研究を進めています。

 

UC-MSCsを活用した治療法の研究とバイオマーカーの探索は、細胞治療の実用化に向けた両輪です。治療技術の開発と並行して、適切な患者さんの選定や治療効果を客観的に評価するための基盤づくりを進めています。

 

参考:サルコペニア治療の臨床研究をブラジルで開始~ヒト臍帯由来間葉系細胞を活用した革新的な治療法の開発を推進~

 

再生医療・細胞治療がサルコペニア治療の選択肢になる可能性

サルコペニアに対する新たな治療法の開発が国内外で進む中、その一つとして注目されているのが細胞治療です。

ヒューマンライフコードでは、UC-MSCsを活用し、サルコペニアに対する新たな治療法の実現を目指した研究を進めています。

以下ではその研究内容と現在の取り組みについて紹介します。

 

臍帯由来間葉系間質細胞(UC-MSC)とサルコペニアの関係

サルコペニアに対する新たな治療アプローチとして、免疫反応を調整し、組織修復を促進する働きがあるUC-MSCsを活用した研究が国内外で進められています。

 

サルコペニアでは、加齢に伴う慢性的な炎症や、筋肉を構成する細胞の機能低下、筋組織の修復力の低下など、複数の要因が病態に関与すると考えられています。こうした背景から、UC-MSCsや同細胞由来の細胞外小胞がサルコペニアの病態にどのような影響を与えるかを調べる研究が進められています。

 

例えば、サルコペニアのモデル動物の一つである老化促進マウスにUC-MSCs由来の細胞外小胞を投与することで筋力や持久力の改善、筋線維サイズや筋重量の増加など、病態の改善が報告されています。

 

また、その背景には、ミトコンドリア機能の改善やアポトーシス(細胞死)の抑制といった作用メカニズムが関与している可能性が示唆されています。

 

これらの知見からUC-MSCsは免疫調整作用や組織修復作用を通じて、サルコペニアの病態改善に寄与する可能性が示唆されています。

 

参考:ヒト臍帯由来間葉系間質細胞から分泌される細胞外小胞のサルコペニア治療応用の可能性 研究成果が国際学術誌に掲載

 

ヒューマンライフコードが進めるサルコペニアのバイオマーカー研究

ヒューマンライフコードがブラジルで進めている臨床研究により、疾患の進行や治療効果の評価に応用しうるバイオマーカーの特定につながる結果を得ました。

 

この研究では、ブラジル在住の高齢者70名を対象に、握力および四肢骨格筋量指数の両方が基準を下回るサルコペニア群23例と、非サルコペニア群47例に分類し、血液中代謝物を網羅的に解析しました。

 

その結果、サルコペニア群と非サルコペニア群で異なる挙動を示す複数の代謝物が同定され、バイオマーカー候補となる代謝物パネルが見出されました。

 

ヒューマンライフコードでは、このようなバイオマーカー探索研究を通じて、サルコペニアの早期診断や病態理解を深めるとともに、将来的な細胞治療の実用化に向けた基盤づくりを進めています。

 

こうした取り組みは、治療対象となる患者さんの選定や治療効果を客観的に評価する方法の確立につながることが期待されており、新たな治療法の実現に向けた重要な研究の一つです。

 

参考:ブラジルで実施したサルコペニア臨床研究の結果を国際学会で発表

 

まとめ:健康寿命を支える新たな選択肢へ

高齢化が進む中、サルコペニアは健康寿命の延伸を実現するうえで重要な課題であり、個人の生活の質(QOL)だけでなく、医療・介護負担にも関わる社会的な課題となっています。

 

現在、サルコペニアそのものを対象としたて承認された治療薬はなく、細胞治療を含む新たな治療アプローチの研究が国内外で進められています。また、それらの実用化に向けては、早期診断や治療効果を客観的に評価するためのバイオマーカー研究も重要な役割を担っています。

 

ヒューマンライフコードは、UC-MSCsを活用した研究開発とバイオマーカー探索を両輪として進めることで、サルコペニアに対する新たな治療選択肢の創出を目指しています。

 

こうした研究を通じて、健康寿命の延伸に貢献するとともに、「誰もが歳を重ねるごとに楽しみな世界」の実現を目指していきます。

 

参考:事業内容 | ヒューマンライフコード株式会社 | Human Life CORD inc.

 

お問い合わせ | ヒューマンライフコード株式会社 | Human Life CORD inc.

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