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コラム

へその緒が拓く再生医療の可能性|臍帯由来細胞の実用化に向けた研究の最前線

ヒューマンライフコードでは、再生医療や細胞治療に関する情報を、より多くの方に分かりやすくお伝えするため、本コラムをスタートしました。

再生医療は日々進歩を続けていますが、その仕組みや可能性について一般の方が触れる機会はまだ多くありません。本コラムでは、再生医療の基礎知識から最新の研究開発動向まで、専門的な内容をできるだけ分かりやすくお届けしていきます。

第1回となる今回は、近年注目を集めている「へその緒(臍帯)」と再生医療の関わりについてご紹介します。

「再生医療」という言葉を耳にする機会が増えています。その中でも、出産後に切り離される「へその緒(臍帯)」が新たな医療資源として注目を集めています。

これまで多くのへその緒は医療廃棄物として扱われてきました。

しかし近年、再生医療に活用できる細胞が含まれていることが分かり、難治性疾患や既存治療では十分な効果が得られない疾患に対する新たな治療法として研究開発が進められています。

本記事では、再生医療や細胞治療の基本的な仕組みやへその緒が持つ医療的価値、臍帯由来細胞の可能性、そしてヒューマンライフコードの取り組む臍帯由来細胞による細胞治療の実用化についてわかりやすく解説します。

そもそも再生医療とは

再生医療とは、細胞の力を活用して、病気やけがによって損傷した組織や臓器の機能回復を目指す医療です。また、細胞そのものを医薬品として用いる「細胞医薬」の研究開発も進んでいます。細胞が持つ働きを利用して病気の治療を目指す点は共通していますが、そのアプローチはさまざまです。

ここでは、へその緒由来の細胞がなぜ注目されているのかを理解するために、再生医療や細胞治療の基礎を紹介します。

再生医療と細胞治療の基本的な考え方

再生医療では、細胞や組織の働きを利用し、病気やけがによって損傷した組織や臓器の機能回復を目指します。

その中心となるのが「幹細胞」です。幹細胞には、自分自身を増やす能力(自己複製能)と、別の種類の細胞へ変化する能力(分化能)があり、こうした特性を活用することで、さまざまな再生医療の研究開発が進められています。

さらに、生きている細胞そのものを薬のように用いる「細胞治療」の研究開発も進んでいます。細胞が持つ働きを利用して病気の治療を目指す新しいアプローチとして注目されています。

従来の医薬品は、薬物の薬理作用により症状を改善したり病気の進行を抑えるのに対して、再生医療や細胞治療は、細胞そのものの働きを活用し、損傷した組織や臓器の修復や機能回復、あるいは病気の改善を目指す点に特徴があります。

そのため、これらの技術は、これまで有効な治療法が限られていた難治性疾患や希少疾患に対する新たな治療選択肢として期待されています。

どのような細胞が使われているのか

再生医療や細胞治療では、さまざまな細胞が活用されています。代表的なものとして、人工多能性幹細胞(以下、iPS細胞)や胚性幹細胞(以下、ES細胞)、間葉系間質細胞(mesenchymal stromal cells、以下、MSCs)が挙げられます。

iPS細胞は、体のさまざまな組織や臓器の細胞へ分化できる能力を持ち、脳や心臓、網膜などの再生医療研究が進められています。

ES細胞も、高い分化能力を持つ細胞ですが、受精卵を使用することへの倫理的課題など、実用化に向けては検討すべき点があります。

こうしたさまざまな細胞の中でも、ヒューマンライフコードが注目し、治療法の開発を進めているのがMSCsです。

MSCsは、過剰な炎症を抑えたり、乱れた免疫のバランスを整えたり、損傷した組織の修復を促す働きを持つことから、細胞そのものを治療に活用する研究開発が進められています。

MSCsは骨髄や脂肪組織のほか、へその緒からも採取することができます。近年は、出産後に得られるへその緒がMSCsの供給源として注目されており、新たな医療資源としての活用が進められています。

へその緒(臍帯)が再生医療で注目される理由

へその緒は、妊娠中に母体と胎児をつなぎ、酸素や栄養素を運ぶ役割を担う重要な組織です。

出産後にその役割を終えたへその緒は切り離され、これまでは医療廃棄物として扱われてきました。しかし、へその緒には細胞治療に活用できるMSCsが豊富に含まれていることがわかっています。

では、なぜへその緒が医療資源として注目されているのでしょうか。その理由を3つの観点から見ていきます。

免疫調整、組織修復作用を持つ間葉系間質細胞が含まれている

へその緒に含まれるMSCsは、免疫の調整や組織の修復といった作用を示し、炎症性疾患において過剰な炎症を抑えたり、損傷した組織の修復を促したりする働きがあることが知られています。これらの作用を活用した、希少疾患や難治性疾患に対する新たな治療法として研究が進められています。

細胞採取の負担が少なく供給体制を整えやすい

骨髄や脂肪から細胞を採取する場合はドナーへの医療処置が必要ですが、へその緒は出産後に役割を終えた組織であるため、母体や新生児への追加的な身体的負担がないことが特徴です。

また、へその緒は出産に伴って得られる組織であり、採取後は保存・備蓄することが可能です。そのため、細胞製品の製造に必要な原材料を安定的に確保しやすく、製造・供給体制の構築に適していることも特徴です。

医療廃棄物だったものが医療資源になる

これまで多くのへその緒は出産後に廃棄されていました。しかし、へその緒には豊富なMSCsが含まれていることがわかり、新たな医療資源としての活用が期待されています。

また、これまで廃棄されていた資源を医療に活用できることから、資源循環やサステナビリティの観点からも関心が高まっています。

ヒューマンライフコードが2024年に妊婦さんを対象に実施したアンケートでは、へその緒が再生医療の原料として活用されることについて、「気軽に提供できるならば提供しても良い」「自分も進んで提供したい」と回答した人が半数を超えました。

この結果からも、へその緒の医療資源としての活用に対する関心が高まっていることがうかがえます。

参考:臍帯(へその緒)の医療資源活用に関する妊婦の意識調査。「出産後のへその緒、医療資源として提供してもいい」が半数以上。 | ヒューマンライフコード株式会社のプレスリリース

臍帯由来の細胞の研究開発が世界で広がっている

UC-MSCsを活用した研究開発は世界的に活発化しており、臨床試験の件数や関連論文数は大きく増加しています。世界的に研究開発が進む中、UC-MSCsは難治性疾患だけでなく、サルコペニアをはじめとする加齢性疾患への応用も期待されています。

臍帯由来細胞は難治性疾患や加齢関連領域への応用が期待されている

へその緒から調製される臍帯由来間葉系間質細胞(umbilical cord-derived MSCs、以下、UC-MSCs)は、炎症の抑制、過剰な免疫反応の調整、障害された組織の修復促進といった働きが期待されており、これまで治療選択肢が限られていた難治性疾患に対する新たな治療法として研究が進められています。

非感染性肺合併症(NIPCs)への研究開発が進行中

ヒューマンライフコードが現在開発を進めているのが、造血幹細胞移植後に発症する非感染性肺合併症(non-infectious pulmonary complications、以下、NIPCs)を対象とした治療法の開発です。

造血幹細胞移植は、白血病などの血液がんに対する治療法ですが、移植後に免疫反応による肺の炎症が起こることがあります。NIPCsの中でも特に特発性肺炎症候群(idiopathic pneumonia syndrome、以下「IPS」)は有効な治療法が限られており、重症化すると命に関わる深刻な合併症です。

このようなNIPCsに対し、ヒューマンライフコードは、UC-MSCsを用いた新たな細胞治療薬「HLC-001」の開発を進めています。

これまでに実施した「HLC-001」のステロイド抵抗性IPSにおける第Ⅱ相試験の結果が国際学術誌に掲載されており、主要評価項目である56日後の生存率および副次評価項目である100日後の生存率はともに71.4%(5/7例)で、これは国内で実施された同様の対象疾患における臨床研究で報告された100日後の生存率27.6%を上回る結果でした。

これらの結果は、HLC-001が特発性肺炎症候群(IPS)に対する新たな治療選択肢となる可能性を示すものであり、今後の開発の進展が期待されています。

参考:造血幹細胞移植後の非感染性肺合併症に対するHLC-001第Ⅱ相試験結果が国際学術誌に掲載

サルコペニアなど将来的な適応領域の広がり

UC-MSCsの応用は、難治性疾患にとどまりません。高齢化社会における課題の一つであるサルコペニアへの応用研究も進められています。

サルコペニアは、加齢に伴い筋肉量や筋力が病的に低下して身体機能が衰える病態です。ヒューマンライフコードと名古屋大学の共同研究では、UC-MSCsが加齢の進んだ動物モデルにおいて筋肉量および筋力の低下を抑制する可能性が示されました。

この成果をもとに、ヒューマンライフコードはUC-MSCsを用いたサルコペニア治療用途に関する国内特許を取得しています。

このように、UC-MSCsは難治性疾患だけでなく、サルコペニアをはじめとする加齢性疾患への応用も期待されています。今後の研究の進展によって、その活用領域はさらに広がる可能性があります。

参考:サルコペニアに対する臍帯由来間葉系細胞の検証結果が「Stem Cell Research & Therapy」に掲載されました。

臍帯由来間葉系間質細胞のサルコペニア治療用途に関する特許取得のお知らせ

実用化に向けて|へその緒(臍帯)の研究はどこまで進んでいるか

UC-MSCsを活用した治療法の開発は、世界中で進められていますが、多くは初期から中期段階にあり、実用化に向けた臨床後期開発段階まで進むプロジェクトは限られています。

ヒューマンライフコードが開発する「HLC-001」は、上記のとおり、NIPCsを対象に第Ⅱ相試験を経て、現在は第Ⅲ相試験に進んでいます。第Ⅲ相試験は、薬事申請、承認取得に向けて有効性と安全性を検証する最終段階の位置づけです。

また、ヒューマンライフコードは持田製薬との共同事業化契約のもと開発を進めるとともに、ロート製薬と連携して製造体制の強化にも取り組んでいます。

このように、UC-MSCsを活用した治療法は研究段階から実用化に向けた重要な局面を迎えています。

参考:造血幹細胞移植後の非感染性肺合併症に対する 臍帯由来間葉系間質細胞「HLC-001」第Ⅲ相臨床試験 治験計画届の提出に関するお知らせ

ヒューマンライフコードとロート製薬、 第Ⅲ相臨床試験に向けた治験製品製造で連携

まとめ:へその緒(臍帯)は未来の医療を支える医療資源として注目されている

これまで出産後に廃棄されることが多かったへその緒ですが、近年は再生医療や細胞治療に活用できる重要な医療資源として注目されています。

UC-MSCsは、過剰な炎症を抑えたり、乱れた免疫のバランスを整えたり、組織の修復を促す働きを持つ細胞です。治療選択肢が限られている難治性疾患や希少疾患、さらには加齢性疾患など幅広い領域への応用が期待されており、世界中で研究開発が進められています。

ヒューマンライフコードが開発する「HLC-001」は、非感染性肺合併症(NIPCs)を対象として第Ⅲ相試験まで進んでおり、実用化に向けた開発が進められています。

ヒューマンライフコードは「つなぐ命のきずな つながる未来」という企業理念のもと、これまで廃棄されていたへその緒から紡がれる細胞の力を活かし、従来の医療では十分な治療選択肢のない疾患に苦しむ患者さんやそのご家族へ、新たな希望を届けることを目指しています。

参考:ヒューマンライフコード 事業紹介

テレビ番組でヒューマンライフコードの取り組みが紹介されます

2026年7月1日放送予定のテレビ東京系の経済トーク番組「アンパラレルド~ニッポン発、世界へ~」(MC:若林正恭氏(オードリー))にて、ヒューマンライフコードが取り組む臍帯由来間葉系間質細胞(UC-MSCs)の研究開発や、再生医療の未来について紹介される予定です。

「なぜ今、へその緒が注目されているのか」「再生医療はどこまで進んでいるのか」など、本記事で紹介した内容をより詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。

番組名:「アンパラレルド~ニッポン発、世界へ~」
放送局:テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
放送予定日:2026年7月1日(水)よる11時6分~11時55分
※放送内容・放送日時は変更となる場合があります。

参考:アンパラレルド~ニッポン発、世界へ~ | テレ東・BSテレ東 7ch(公式)

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